
SPECIAL FEATURE特別取材
シリーズ連載/英国ドリンク事情
[vol.03] -
All ABOUT UK GIN@ジンフェスティバル 東京 2019
#Special Feature
文:Drink Planet編集部
「ジンフェスティバル 東京 2019」のメイン会場。Photos by Yoshitatsu Ebisawa
日本最大のジンの祭典「ジンフェスティバル 東京」!
2019年6月8日(土)9日(日)の2日間、天王洲B&C HALLにおいて、今年で2回目となる日本最大のジンの祭典「ジンフェスティバル 東京」が開催されました。
来場者の数は、前年比1.9倍(!)となる約9,000名。
ここ日本でもクラフトジンが単なるトレンドから着実に定番になりつつあることを感じさせる大盛況ぶりでした。
出展社の数は約50社、提供されたジンの銘柄は210種類以上。
また各種セミナーやワークショップ、好みのジン+トニックウォーターでつくってもらえる「ジントニックバー」、試飲したジンをその場で購入できる「ボトルショップ」といった魅惑のコンテンツの他に、すぐ隣の船舶型のイベントスペースT-LOTUS Mでは、英国政府協力のもと、英国ジンに特化したエキシビジョン「ALL ABOUT UK GIN」も展開されていました。
同エキシビジョンによると、十数年前にはわずか15ヵ所ほどだった英国のジン蒸溜所の数は、WSTAがデータを蓄積し始めた2010年には116ヵ所、2017年には315ヵ所、7年間で199カ所増加と飛躍的な伸びを示しています。
現在、英国では、約140ヵ国に向けて840億円分のジンを輸出しているのだそうです。
これは世界に輸出されるジンの、実に7割!
わかってはいましたが、英国はなんだかんだいっても、やはりジンの王国なのです。
英国ジンに特化したエキシビジョン「ALL ABOUT UK GIN」。
三浦武明さんが語る、英国ジンの魅力って?
そこで「ジンフェスティバル 東京」オーガナイザーの三浦武明さんに、英国ジンについて話を訊きました。
今回の「ジンフェスティバル 東京」では、合計何種類くらいの英国ジンが披露されているのでしょうか?
「現在の英国には300ヵ所以上のジン蒸溜所があると言われています。『ジンフェスティバル 東京 2019』では展示だけで100銘柄ほど、試飲できるのは30銘柄ほどです。今年は世界21ヵ国のジンが集まり、全体のバランスを見て、これくらいの数に留めていますが、やはり質・量ともに英国のジンは最高峰といえるでしょう」
「英国ジンは、まずなにより、総じてレベルが高い。ロンドンドライジンの本場なので、当たり前といえば当たり前なのですが、先日、2週間ほど英国各地のジン蒸溜所を巡ってきて、改めて英国ジンのレベルの高さを痛感させられました」
「大手の蒸溜所が手がける王道のロンドンドライジンがあるからこそ、小さな造り手が実験的で個性的なジンを生み出し、それが英国ジン全体の多様性にも繋がっています。歴史があって、積み重ねた経験があって、戻るべきスタンダードがあるからこそ、逆に遊び心やユニークさや地域性を発揮できるのかもしれません」
三浦さんによると、最近ではジンが地元の観光業と連携したジンツーリズムが盛んなんだとか。
本場英国においても、ジンのムーブメントは勢いを増すばかりのようです。
「ジン好きはなんだかんだ言って、英国ジンから入って、最終的には英国ジンに戻ってきます(笑)」
左/「ブラックチャイ・ジン」。右/「オピア ロンドン・ドライ・ジン」。
本場中の本場、メイド・イン・イングランドのジン!
では「ジンフェスティバル 東京 2019」で気になった英国ジンをいくつかピックアップして紹介していきましょう。
まずは会場内の「ジントニックバー」で一番人気(特に女性に!)だった「ブラックチャイ・ジン(BLACK CHAI TEA GIN)」。
こちらは、オーガニックプロデューサーの荻野みどりさんが英国王室御用達の「London & Scottish International Ltd.」と共同でレシピ開発をした、メイド・イン・UKの100%オーガニックジンです。
その名の通り、アフターテイストにはスパイシーなブラックチャイのニュアンスが漂います。
会場の女性たちからは「カレーやアジアの料理にも合いそう」という声も飛び交っていました。
同じく「オピア ロンドン・ドライ・ジン(OPIHR ORIENTAL SPICED LONDON DRY GIN)」も、オリエンタルなスパイスが効いた個性派の一本です。
その味わいを特徴づけているのは、モロッコ産のコリアンダーの実、インドネシア産のクベバの実、そしてインド南西部テリチェリー産のブラックペッパー。
かつて世界の海を制した大英帝国の名残を感じさせるエキゾチックな味わいは、これまたスパイシーな料理と相性抜群と言えるでしょう。
左/「カーキュヴァー・オークニー・ジン」。右上/「アイル・オブ・ハリス ジン」。右下/「オールド・キュリオシティ・ジン」3種類。
スコッチといえば、ウイスキーじゃなくて、ジン!
さて、スコットランドといえばウイスキーですか?
いえいえ、それだけではありません。最近ではその伝統的な蒸溜技術やローカルのボタニカルを活かしてクラフトジン造りも盛んなのです。
2017年にスコットランド・エディンバラ郊外に創業した「オールド・キュリオシティ・ジン(OLD CURIOSITY GIN)は、薬草学の学位を持ち、ハーブ園を手がけるハミッシュ&リバティ・マーティン夫妻によるジン蒸溜所。
今回登場した「アポシカリー・ローズ・ジン」「ラベンダー&エキナセア・ジン」「ゼラニウム&マロウ・ジン」の3ラインナップは、香りや味わいはもちろん、その美しい色合いが目を引きます。
いずれも天然成分由来の色で、温度や割材によって色の変化も楽しめる魔法のジンです。
一方、2015年に蒸溜をスタートした「アイル・オブ・ハリス ジン(ISLE OF HARRIS GIN)」は、名前からもお分かりの通り、スコットランド北西部のハリス島で蒸溜されるジン。
(あのハリス・ツイードの島です!)
こちらは、ジュニパーベリーやコリアンダーといった8種類のボタニカルに加えて、島のダイバーたちが手作業で収穫した昆布(シュガー・ケルプ)を使用しているんだとか!
いわゆる出汁のような昆布の海の旨味がふくよかに溶け出した一本です。
また、北海に浮かぶ最北のオークニー諸島で2016年に誕生したのが「カーキュヴァー・オークニー・ジン(KIRKJUVAGR ORKNEY GIN)」。
こちらは、バイキングの末裔の島らしい力強いアタックのなかに、ハマナスやカラマンシー(四季柑)、バイキング時代にオークニーに伝わったというアンジェリカといった19種類のボタニカルの甘さがほどよく調和しています。
ウイスキーでは王道のスコットランドですが、ジンにおいては若く意欲的な造り手が多く、そのぶん個性派で面白いジンが多く揃っています。
左/「ブレコン ボタニカルズ ジン」。右/「ショートクロス・ジン」。
ウェールズからも、北アイルランドからも!
イングランド、スコットランドと来たら、ウェールズや北アイルランドも外すわけにはいきません。
ウェールズ代表は、ペンダーリン蒸溜所による「ブレコン ボタニカルズ ジン(BRECON BOTANICALS GIN)」。
蒸溜所があるのは、南ウェールズのブレコン・ビーコンズ国立公園のすぐ南。
約3億年経過したとされる石灰岩層によって濾過された地下水を仕込み水に、100年前の古いレシピと、世界中から取寄せた10種類のボタニカルで仕上げられた、雑味のないピュアな味わいのクラフトジンです。
一方、北アイルランド代表は、レイデモン・エステイト蒸溜所が手がける「ショートクロス・ジン(SHORTCROSS GIN)」。
主要なボタニカルは、エルダーフラワー、エルダーベリー、野生クローバー(シロツメクサ)、リンゴの4つ。
主に蒸溜所内の森や庭園から採取したボタニカルから成る「ショートクロス・ジン」は、世界で唯一、野生クローバーを使用したジン、とのことです。
今回は「ジンフェスティバル 東京」で披露された独立系の小規模蒸溜所のジンを中心にピックアップしましたが、もちろん大手メジャー蒸溜所のジンブースにも長蛇の列ができていました。
オリンピックイヤーの来年2020年には、ますますパワーアップして、さらにバリエーションを増やした英国ジンがお披露目されることでしょう!