
SPECIAL FEATURE特別取材
「ディアジオ ワールドクラス 2011」
世界大会レポートfrom New Delhi
[vol.02] -
中編-1・6つのチャレンジ
#Special Feature
気になる各国の順位は!?
「ディアジオ ワールドクラス」世界大会では、前編でご紹介した総合トップ10だけでなく、
「アジア・パシフィック」「ヨーロッパ」「ラテンアメリカ・カリブ、アフリカ、中近東(人数の都合上各エリアをひとまとめにした審査となる)」という3つのエリアごとのトップ、そして審査の対象となる競技6種目ごとのチャンピオンを選出する。
見事優勝を手にした大竹氏は、当然のことながらアジア・パシフィック地区のトップ。
一方ヨーロッパ地区のトップにはオーストリアのハインツ・カイザー氏、ラテンアメリカ・カリブ地区からは、メキシコのヘスス・カブレラ氏が選ばれた。
バーテンダー・オブ・ザ・イヤー2011 | 大竹学氏(セルリアンタワー東急ホテル タワーズバー「ベロビスト」/東京・日本) |
アジア・パシフィック地区1位 | 大竹学氏(同上) |
ヨーロッパ地区1位 | ハインツ・カイザー氏( Dino’s American Bar/ウィーン・オーストリア) |
ラテンアメリカ地区1位 | ヘスス・カブレラ氏( Fry Restaurant, Bar Time Lounge/メリダ・メキシコ) |
6つのチャレンジごとのトップには韓国、台湾、インドの3名も選出され、アジア勢が大健闘!
今後のバーシーンのトレンドを予感させる結果となった。
「ディアジオ ワールドクラス」世界大会では、ファイナリストたちはそれぞれの国で開かれた予選大会よりさらに多い6種類のチャレンジに挑み、その技を競い合う。
そして各チャレンジの審査員をつとめるのは、世界のバーテンダー界を代表する6名のマエストロたち。
それでは、各チャレンジについてご紹介しよう。
1st Challenge Asian Food Matching アジアン フードマッチング
審査員:ダニエル・エストレマドイロ氏
1位:トルステン・スパン氏(Modern Masters Bar/エアフルト・ドイツ)
バーテンダーもシェフの感性が必要な時代!
最初のチャレンジは、アジアの多彩な食材を使った6種類のカナッペから2種類を選び、それぞれに合ったカクテルを2点創作するというもの。
インドでの大会だけに、現地の食材やスパイスをふんだんに盛り込んだ魅惑のフードが登場。
その中身は、例えば「タンドーリチキンティッカとアボカドディップ、パプディ添え」や「海老入りレッドタイカレーマンゴチャツネ添え」といった、
いかにもエスニック〜なメニュー。だが審査員ダニエル・エストレマドイロ氏は、「メニュー名からくる先入観にまどわされず、まず自分の舌で味わい、そこから感じ取ったものを信じるべき」とコメントする。
氏曰く「それはまさにスターウォーズ……」
「バーテンダーたちよ、瞳を閉じて、フォースを使うのだ!」
(ファンの方わかりますか?)。
とにかく、いまやバーテンダーにもシェフとしての感覚が必要とされる時代ということ。ちなみに大竹氏が選んだのは前述の2点「タンドーリチキンティッカとアボカドディップ、パプディ添え」と「海老入りレッドタイカレーマンゴチャツネ添え」。
前者に合わせてセロリやレモンを使ったすっきりとした飲み口のカクテルを、後者に合わせて自家製ジンジャーシロップを効かせたサフランイエローのカクテルをクリエイトした。
そんななかこのチャレンジを制したのはドイツのトルステン・スパン氏。
自身も「食べることが大好き!」というスパン氏、常日頃から新しい素材の組み合わせを研究することに余念がなく、憧れのシェフや、新妻のカタリーナさんが作る料理からカクテルとフードマッチングのインスピレーションを得ることが多いのだとか。
選んだ料理のフレーバーを誰よりも正しく理解できていたとの評価も、日々の味覚の鍛錬の成果だったのであろう。
さて、そんなスパン氏が「トムヤム風味の春雨ときくらげ入り揚げワンタン」に合わせてつくったカクテルレシピはこちら。Yummy!
シャングリラ・フィズ | |||
---|---|---|---|
タンカレーNo.10 | 40ml | ケテル シトロエン ウオッカ | 20ml |
カルダモン ヴェルモット | 30ml | レモンジュース | 25ml |
シロップ | 25ml | 卵白 | 1/2 |
ジンジャービール | 40ml | ||
ジンジャービール以外のすべての材料をシェイク、氷の入ったグラスに注ぐ。 ジンジャービールを加え、黒コショウ、レモンゼスト、バジルでフィニッシュ。 |
2nd Challenge Theatre&The Stars シアター&ザ・スターズ
審査員:ピーター・ドレッリ氏
1位:アルベルト・ピサロ氏(Bobby Gin/バルセロナ・スペイン)
試されるのは、創造性とプレゼン能力。
サービングでいかにしてゲストを魅せられるか。
このチャレンジでは、バーテンダーのクリエイティビティとプレゼン能力が試される。
まず伝説の女優やディーバをイメージしたオリジナルカクテルを創作し、次にボトルサーブでゲストをもてなすプレゼンテーションを披露する。審査員のピーター・ドレッリ氏からは、“Entertain me!”の一言。
自分が審査員である前に一人のゲストであることを忘れずに、それぞれのスタイルを思う存分発揮してもてなしてほしいとのことだ。
確かにこのチャレンジは、カクテルメイクについてだけでなく、小道具や衣装についてもバーテンダーたちの個性が際立っていた。
そんななか、トップに選ばれたのはスペインのアルベルト・ピサロ氏。
彼がボトルサーブで選んだのは、それだけで十分主役となり得るジョニー・ウォーカー ブルーラベル。
だから、ドリンク本体にはサンダルウッドのチップで香り付けするだけで、ほかにはあえて何も加えないことを決めた。
その代わりに、香りでムードを演出しよう。それがピサロ氏のアイデアだった。
そしてバルセロナ中の石鹸・キャンドルショップなど、香りやフレーバーを扱うあらゆる店をわたり歩き、このカクテルのインスピレーションを得たのだという。
チョコレート、ローズの石鹸、はちみつとバニラエッセンスの香り漂うハンドクリームなど、カクテルを味わう前に、ゲストの“手”に香りをあしらう。
ゲストは、その香りを楽しみながらイマジネーションを膨らませ、ジョニー・ウォーカーを味わうという訳だ。
こうしたゲストの嗅覚に訴えるという斬新な演出が、審査員のドレッリ氏の心を掴んだようだ。
まるで実験器具のような道具を使った「ラボ」を思わせるプレゼンも、観る者の目を存分に楽しませてくれた。
カクテルを味わうのは舌だけではない。
味覚はもちろん、嗅覚、そして視覚も大切な要素なのだ。
3rd Challenge Classic, Vintage and Twists
クラシック・ヴィンテージ・ツイスト
審査員:上野秀嗣氏
1位:へマント・パタク氏(The Blue Bar/ニューデリー・インド)
往年のレシピを2011年的に再解釈する。
「クラシック」「ヴィンテージ」「ツイスト」と銘打った3種類のカクテルを創作するこのチャレンジ。
クラシックは今でも飲まれているスタンダードカクテル、ヴィンテージは特定の時代に飲まれていたカクテル、ツイストはそれらのカクテルに現代的なひねりを加えた創作カクテルで、往年のレシピの再定義をはかるというもの。
クラシック、ヴィンテージはそれぞれ6種類のメニューのなかから抽選で当たったものを、ツイストはそれらのなかから好きなものを選んで創作する。
ただカクテルメイクするだけでなく、そのカクテルの歴史的背景を含めて説明する必要があり、バーテンダーとしてどれだけ多くの引き出しを持っているかが問われるのだ。
このチャレンジの審査員、上野秀嗣氏(海外のバーテンダーたちはみな敬意を込めて“Ueno-san”と呼ぶ)は、「クリーンなテーブルと手際よくキレのいい仕事がバーテンダーの命だ」と言い切る。
そして「基本に忠実に」「バーテンダーとして常日頃からどんな仕事ぶりをしているかが見たい」という言葉に、日本人バーテンダーの真髄を見た思いがした。
そんな上野氏のお眼鏡にかなったのは、インド代表のへマント・パタク氏。
ニューデリーで最もスタイリッシュなバー「The Blue Bar」に所属し、自ら考案したスパイスやインド特有の食材を使ったメニューで世界中から集まるゲストを魅了する、23歳の若き新星だ。
味だけでなくバーテンダーとしてのスキルが優れていることは、上野氏が選ぶのだから間違いない。
強豪たちを押しのけてのこのチャレンジ優勝は、まだ比較的あたらしいインドのカクテルシーンに大きな影響を与えることだろう。
パタク氏のツイストカクテルの隠し味は、ハーブ(ローズマリー/タイム/シナモン/カルダモン)を使ったホームメイドのシロップ。作り方はヒミツ。
ブレイジング・サドルズ(ブレイザー) | |||
---|---|---|---|
ドンフリオ レポサド テキーラ | 40ml | オレンジキュラソー | 15ml |
コニャックVSOP | 5ml | 自家製ハーブシロップ | 10ml | シロップ | 5ml | アンゴスチュラビターズ | 2滴 |
銀製のマグカップを2つ用意。すべての材料を入れてから点火し、ブレイザースタイルでミックス。 グラスに注ぎ、レモンツイストをふりかける。 |