
SPECIAL FEATURE特別取材
あのバーテンダーが
「ワールドクラス」に挑戦した理由
[vol.03] -
ワールドクラス 2011・2013
シンガポール大会優勝、江口明弘さんインタビュー
#Special Feature
文:Drink Planet編集部
江口明弘。ワールドクラス2011および2013 シンガポール大会優勝。シンガポール代表として2度、グローバルファイナルに出場する。現在はシンガポールで5店舗を手がける「Jigger & Pony 」グループのビバレッジダイレクターとして活躍中。
世界約60の国と地域から25,000人を超えるバーテンダーが挑戦する、文字通り、世界規模のバーテンダーコンペティション、ワールドクラス。
今回のDrink Planetの特別取材では、過去にワールドクラスで活躍したトップバーテンダーをインタビュー。
最終回となる今回は、日本ではなくシンガポールへ。
Asia's 50 Best Bars 2019において9位にランクインする「Jigger & Pony 」や同15位の「Gibson」など、グループ5店舗のビバレッジダイレクターを務める江口明弘さんに話を聞きました。
(ちなみに「Jigger & Pony 」はThe World's 50 Best Bars 2019でも堂々29位!)
インドで開催されたワールドクラス2011世界大会にて。
総合力が問われるコンペティション。
2006年に日本からシンガポールへ移った江口さんは、ワールドクラス2011および2013 シンガポール大会のチャンピオン。
シンガポール代表としてグローバルファイナルを2度(インド開催・ブラジル開催)経験し、2012年にはオブザーバーとしてもグローバルファイナル(地中海開催)に参加しています。
シンガポールを拠点に、アジアや世界のバーシーンを知る江口さんにとって、ワールドクラスとはどんなコンペティションなのでしょうか?
まずはワールドクラスに挑戦したきっかけを聞いてみました。
「シンガポールでワールドクラスが始まったのは確か2009年から。まだシンガポールのバーカルチャーは発展途上中でしたが、これから新しいなにかが始まりそうな希望と混沌が入り混じっている時代でした。そんななかで開催されたワールドクラスは、これまで行われてきた他のコンペティションとはまったく違っていました。具体的にいうと、バーテンダーの総合力が問われる新しい時代のコンペティション。これは面白そうだなと思って、2010年に初めてエントリーしました」
ワールドクラスにチャレンジしてみた感想はいかがでしたか?
「まずなにより楽しかったですね。フードペアリングやマーケットチャレンジのような当時のトレンドを意識したチャレンジが多くて、自分の中でも新しい引き出しがどんどん増えていきました。日本人バーテンダーとして技術や作法には多少の自信はあったのですが、自分の店のスタイル以外のことや英語でのプレゼンの仕方も学べたし、ポジティブに視野が広がりましたね」
ワールドクラスで得た、常に学ぶ姿勢。
2011年と2013年にシンガポールチャンピオンになって、取り巻く環境は変わりましたか?
「とにかく世界中に知り合いが増えて、どの国のどの街に行っても、必ずバーテンダー仲間がいるようなネットワークができました。ゲストやジャッジとして世界各国に呼んでもらう機会も増え、特にアジアの都市は数えきれないほど回りましたね」
「ワールドクラスを通じて広がったネットワークは、実際に現在の仕事にも繋がっていますし、一人の人間として他では得られない大きな財産。そういう意味でもワールドクラスには感謝しています」
「それから『常に学ぶ姿勢』もワールドクラスを通じて身についたことのひとつです。現在は5店舗のビバレッジダイレクターをしているのですが、5店舗それぞれに業態が違うので、広い視点で物事を見極めながら、常に自分をアップデートしていないと、店をまわすことができないんです」
「常に新しいカクテルのことを意識しながら、いくつものアンテナを張って、業態や客層に合わせてメニューのクリエーションを行わなければなりません。これって、つまりはワールドクラスに向けたトレーニングと一緒なんです。大会を意識しながら日々の営業に向き合うことで、自分自身のレベルアップが促される点も、ワールドクラスならではだと思います」
キャリアアップの絶好のチャンス!
ここ数年でバーカルチャーが飛躍的に発展し、東南アジアをリードする立場になったシンガポールのバーシーンにおいて、ワールドクラスはどのような役割を果たしているのでしょうか?
「今でこそシンガポールでもさまざまなコンペティションが開催されるようになりましたが、やはりワールドクラスは特別ですね」
「影響力や注目度、知名度、なにより一人のバーテンダーとしてジャッジしてもらえる点に価値があると思います」
現在、ワールドクラスに挑戦するバーテンダーのタイプや傾向はありますか?
「年齢は20~30歳くらいまでが多いですね。日本に比べると若いかもしれませんが、アジアレベルでいうと、どの国もおそらく20代が中心だと思います。もともとの国籍やスタイル、バーテンダーとしてのスキルや経験値もさまざま。ただし数年前よりレベルが上がっているのは間違いありません」
「参加者のモチベーションもはっきりしています。ワールドクラスで勝って、名前を売りたい、昇進して給料を上げたい、有名バーに移籍したい、という風に、キャリアアップの絶好のチャンスと捉えています。そのへんはいかにもシンガポールらしいですね」
No Pain, No Gain.
最後に、これからワールドクラスに挑戦するバーテンダーにメッセージをいただけますか?
「No Pain, No Gain.じゃないけど、まず踏み出さないと、なにも得られませんよね。年齢は関係ないかもしれませんが、少しでも早くスタートしたほうが吸収は早いですし、若いからこそ得られる経験や知見も多いはずです」
「もちろんそんなに難しく考えることなく、ファーストステップは『なんか面白そう』くらいのノリでもいいと思います。ウチの若いスタッフにもワールドクラスに挑戦することを勧めています」
「シンガポールやアジアの出場者はとにかく若い子ばかりなので、日本からもこちらが驚くような、フレッシュで個性的なバーテンダーが出てきてくれることを期待しています」
★ワールドクラス ジャパン オフィシャルサイト
www.wcjapan.jp
【編集部注】
2020年の日本大会ならびに世界大会は2021年に延期となりました。残念です!
★Jigger & Pony
www.jiggerandpony.com