
SPECIAL FEATURE特別取材
【スペシャルレポート】
薬草酒マニアのバーテンダー鹿山博康氏、
アブサンの故郷、スイス・フランスをゆく。
[vol.03] -
希少なオールドボトルを求めて!
<フランス・リモージュ編>
#Special Feature
文:Drink Planet編集部
左/リモージュの街並み。右/鹿山さん一行がホームステイしたお宅。
続いては、今回の旅のもう一つの目的である、フランスはパリの南に位置するリムーザン地域圏リモージュという街へ。
中世より栄えたこの街は、世界的にリモージュ焼き(磁器)の街として知られています。
ちなみにリモージュを州都とするリムーザン地域圏は、ブランデーやウイスキーの熟成樽に使用されるリムーザン・オークの故郷でもあります。
昔の写真を手にご機嫌なカリム・カロームさん。
さて、リモージュから車で30分ほど、アンバザック(Ambazac)という小さな集落に、Bar Ben Fiddichで取り扱っている古酒の薬草酒の購入先があります。
店主は、古酒の収集家でもあるカリム・カローム(Karim Karroum)さん。
知り合うきっかけとなったのは、日本在住のフランス人ライターさんからのご紹介でした。
そこから何度もメッセージのやりとりをして、晴れてBar Ben Fiddichでカリムさんの古酒を取り扱わせてもらえるようになりました。
そして今回、念願の対面を果たすことができたのです!
カリムさんの所蔵するコレクションはとにかく圧倒的。
ワイン、コニャック、アルマニャック、フランス海外県のラム、ベルモット、リキュール、マールなど、主にフランスの古酒を幅広く揃え、古いものでは18世紀のものもストックしています。
そんなカリムさんの自宅に三日間ホームステイさせてもらい、彼の古酒に対する情熱と想いを浴びることとなりました。
朝からたくさんの古酒を飲ませてもらい、気がつけばカリムさんの長~い講義がはじまる……、という毎日でした。
オールドボトルは、ラベルの文言、ボトルの形状、封印の形などでどの時代のものかを見極める。
それではここで、Bar Ben Fiddichではなぜ古酒の薬草酒を多く取り扱い、そこに魅せられるのかを説明いたしましょう。
①まず薬草酒には(基本的に)糖分が含まれています。
数十年経過すると少しアルコール分が飛び、そのぶんエキスや糖分が濃縮され、デザートのような味わいになります。
これは言い換えるなら、時間経年によるボトルエイジング。
ここに大きな魅力があります。
特に1970年代以前の薬草酒は、現行のものに比べるとアルコール度数が高いものが多く、経年への耐久性にも優れています。
②次に、ラベルの文言、ボトルの形状、封印のシールや形により、そのボトルの時代を読み解くことができることです。
古酒の薬草酒には、調べる楽しさがあり、そこに時代を感じることができます。
目を閉じれば、当時の造り手の顔が見えるようで、実に楽しい!
以上のような理由から、わたくし鹿山は古酒の薬草酒の世界に魅せられていったのです。
カリムさんのコレクションのほんの一部。
それにしてもなぜ、カリムさんはここまで希少な古酒を所蔵できているのでしょうか?
本人に聞いてみると「フランス中の各家庭で眠っている古酒の情報が入ると、車を飛ばしてどこにでも行って買い集めてくるんだ」とのこと。
そもそもヨーロッパの家は木造建築の日本とは違い一般的に石造りで、築100年超の住居も珍しくありません。
おまけにそのほとんどに地下セラーがあり、そこにまだ陽の目を見ない多くの古酒が眠っているんだそうです。
(実にうらやましい限りです!)
日本のバー業界では、昔からオールドボトルを取り扱うバーがたくさんあります。
最近では海外でもオールドボトルの需要が増え、コレクター以外にバーテンダーがバーで取り扱うケースが右肩上がりに増えているとのこと。
カリムさんは「ボクの商売もあと10年くらいかな」と言っていました。
まだ見ぬ古酒が多く眠っている可能性があるとはいえ、フランスでも古酒はどんどん減ってきており、価格も高騰しているんだそうです。
古酒は増えることがありません。
現存するものがなくなればそれまで。
ただ、そこにロマンがあります。
あの時、あの時代に存在したボトルが、現代に古酒として存在し、その時代に想いを馳せながら嗜むことができる。
その意味で“究極の嗜好品”なのです。
カリムさんの珠玉の古酒コレクションは、フランスのリモージュまで行かずとも、Bar Ben Fiddichでお試しいただけます。
ぜひ、足をお運びください!